米国の経済は、自動車販売の不振と住宅市場の軟化というリスクを負っているものの、全体としては、「穏やかなペースで拡大」しているといわれている。
とりわけ、個人消費については、商務省の発表によると、クリスマス商戦において、薄型テレビや新型ゲーム機が活況であったことから家電の販売が好調であるなど、各種小売り関係の指標は概ね好調だった。その一方で、自動車販売については、日系自動車メーカーが揃って好調であった半面、GMやFordの落ち込みが目立ち、全体的には前年同月比で3.6%減少している。これには、最近落ち着いてきたとはいえ、昨今のガソリン価格の上昇による影響にあるものと考えられる。
住宅市場については、全米規模での軟調が続いている。地区連銀報告によると、住宅価格は、サンフランシスコ・ダラスの両連銀管轄区で穏やかながら引き続き上昇を示している地域がある一方、全米としては価格が下落している地域が広がっている。また、住宅供給の超過傾向が大きくなり、住宅在庫の水準が上がり、新規住宅着工件数が鈍化している。しかし、その一方で商業用不動産については全米規模で好調な状況が続いており、空室率の低下にも拘わらず新規建築が十分ではなく、オフィス賃貸料が上昇している。
労働市場では需給の逼迫状況が続いており、特にエンジニアリング、機械工、金融、会計専門家に対する需要が大きく増加している。その一方で製造業や配送業における雇用は鈍化しているとの報告もあり、業種による労働需要の違いが見られる。しかし、労働需給の逼迫にも関わらず、賃金上昇率は比較的穏やかなものにとどまっているが、企業にとっては賃金よりも医療保険負担等の福利厚生費の負担を懸念する声が上がっていると言われている。
今年に入って連邦の下院を通過した最低賃金の引き上げ法案について、この引き上げが、雇用の減少等のマクロ経済にどれほどの影響を与えるかという点が注目を集めているが、直接的には大きな影響は与えないだろうという声もある。
その理由としては、今回の引き上げは41%の大幅引き上げではあったが(従来の時給5.15ドルから7.25ドル)、前回最低賃金を引き上げた97年以降、連邦政府が長期間に渡って連邦レベルでの引き上げを行わなかったことから、既に21の州が自主的に連邦のレベルを超えるレベルでの最低賃金法案を別途成立させていること、そのなかにはすでに物価スライド方式を採用している州も少なくないこと、今回の最低賃金の引き上げに併せて、連邦議会の多数を占める民主党が、共和党の一部の議員の主張を入れて、中小企業に対する減税措置をとる方針を固め、既に上院を通過させていることがあげられている。 |