令和2年春の叙勲

令和3年3月17日

ナンシー・キョウコ・オダ氏に対する叙勲伝達式

令和2年4月29日に令和2年春の叙勲受章者が発表され,当館管轄地域からはナンシー・キョウコ・オダ氏が旭日双光章を受章されました。

オダ氏は,昭和53年以降,40年以上に亘り,サンフェルナンドバレー日系アメリカ人コミュニティセンターの会員として活動し,平成23年に,同氏は,小学校の校長の職を17年間務めた経験と優れた指導力から,同コミュニティセンターの会長職に就任されました。2年間の会長任期終了後,現在も役員を続け,1000の家族会員を持つ同コミュニティセンターの発展を支え,日米交流の促進に多大な貢献をされています。
 
会長就任の年の平成23年に東日本大震災が発生し,同人は,同コミュニティセンター及び地域の日系団体等に働きかけ,積極的な募金活動に取り組まれました。年間を通じて集まった義援金計11万ドルを日本に送金し,5年後の平成28年には,震災孤児を支援するための義援金募金イベントも開催されました。
 
ツールレイク強制収容所で日系三世として生まれたオダ氏は,生き延びることができたからには,収容所での出来事を伝えていく責任があると確信し,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の東アジア研究学科に在籍中,父タツオ・イノウエ氏が,強制収容所での出来事を記録に残した「ツールレーク軍事刑務所日誌」の英語翻訳に取り組まれ,平成30年には,第2次世界大戦中の日系人の歴史を保存するUCLAのスヤマ・プロジェクトの一環として,同日誌の英語翻訳版をオンライン出版しました。
 
平成25年6月,荒地となり,住宅地開発が計画されていたツナ・キャニオン拘置所跡が,ロサンゼルス市の史跡に認定され,同氏は,ツールレイク収容所生存者であり,サンフェルナンドバレー日系アメリカ人コミュニティセンターの会長としての高い指導力を発揮していた功績が認められ,平成26年,ツナ・キャニオン拘置所連合の初代会長に就任し,非営利団体として発足させました。
 
オダ氏の主導の下,ツナ・キャニオン拘置所の歴史的事実の認知を広める巡回展が企画されると共に,米議会による日系人収容所助成金プログラムから助成金を獲得し,巡回展の実現に至っています。この巡回展「オークの木だけが知っている」は,2000人以上の拘束された日本人,ドイツ人,イタリア人移民及び送還された日系ペルー人の拘置所での経験を写真,手紙,日記などによって紹介するもので,西海岸12か所で開催されました。同連合発足以前はほとんど知られていなかったツナ・キャニオン拘置所は,同氏の優れた統率力と,同連合の活発で継続的な広報活動及びロビー活動の結果,平成31年には,ロサンゼルス市が確保した,ツナ・キャニオン拘置所跡の一部の土地に,拘置所跡地看板が設置されるに至りました。
 
また,日系人強制収容の歴史を若い世代へ伝えるべく,カリフォルニア大学ロサンゼルス校,カリフォルニア州立大学ノースリッジ校及び同ロングビーチ校他,多数の高校や教育団体に出向いて強制収容の事実を後世に伝える活動に積極的に取り組んでこられました。

オダ氏の叙勲伝達式は,令和3年3月11日(木)に行われました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響下、叙勲伝達式は極めて少人数で総領事公邸にて行われました。