令和元年春の叙勲受章者

令和元年5月20日

5月21日(日本時間),日本政府は,令和元年春の叙勲受章者を発表しました。当館管轄区域関係者では次の2氏に対して授与されます。
 


 

賞賜

功労概要

主要経歴

氏名

性別 年齢

現住所

旭日中綬章 歯周病学分野における日本・アメリカ合衆国間の学術交流の促進及び
日本の歯周療法学の発展に寄与
 
元 カリフォルニア大学
ロサンゼルス校歯学部
歯周療法学科臨床学
教授
ヘンリー・H・タケイ
(男・80歳)
米国
カリフォルニア州
ロサンゼルス市
 
旭日単光章 在留邦人への福祉功労 元 リトル東京サービスセンター社会福祉部長
 
ソーシャルワーカー
坂本 安子
Yasuko Sakamoto
(女・71歳)
米国
カリフォルニア州
ローズミード市

 

各受章者の対日功績

ヘンリー・H・タケイ【旭日中綬章】

ヘンリー・H・タケイ【旭日中綬章】
ヘンリー・H・タケイ氏は,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(以下,UCLA)歯学部歯周療法学科臨床学教授時代の平成5年,明海大学と朝日大学に働きかけ,両大学とUCLAの大学間交流プログラムを設立しました。当該プログラムは,今日ではUCLAの常設プログラムになっており,これまでに累計で385人の学生と教員が参加しました。同氏は,当該プログラムの創設及び継続的な関与を通じ,歯科医療分野における学術研究及び若手研究者の指導・育成に尽力し,日米間の学術交流の促進に寄与しました。
 
同氏は,昭和48年以来,日本の様々な組織や大学で講義を行ってきました。東京をはじめとして,埼玉,山形,横浜,福岡,大阪,名古屋,千葉,新潟,神戸,鹿児島,京都など,ほぼ毎年のように講義を行い,平成30年までの46年間で,来日数は50回を超えます。これらの講義は,日本全国の数千の歯科医に最先端の教育を与える貴重な機会となり,歯科医療,特に歯周病学やインプラント分野の発展に寄与してきました。
 
同氏は,世界で最も広く用いられ,現在の歯周病学の集大成とされる書籍「CARRANZA’S クリニカル・ペリオドントロジー」の4人の編集者の1名であり,共著者です。また,若手歯科医師必読の書とされている「ペリオ&インプラントセラピー」も執筆しました。これら書籍は,日本語にも翻訳され,教育の現場で用いられているなど,日本における歯周病教育の発展に大きく貢献してきました。
 
同氏は,日本人が多く住み,働くロサンゼルスの市内中心部に歯科医院を構え,長年にわたって米国内外から来る日本人の患者の対応をしてきました。在留邦人や日系人を含む多くの患者に対し,日本語及び英語を用いた歯科治療に従事し,日系コミュニティの保健・衛生の向上に貢献しました。

坂本 安子 【旭日単光章】

坂本 安子 【旭日単光章】
坂本安子氏は,昭和23年に福島県いわき市で生まれ,高校卒業後に上京して働きながら明治学院大学英文学科に通われました。卒業後再び,住み込み家庭教師をされながら明治学院大学社会学部に入学し,ケースワーカーになるために社会福祉を学ばれました。卒業後,東京都内の神経内科で,ケースワーカーとして,入院患者や外来患者のケアをされました。
 
1976年に渡米し,1978年から,ロサンゼルスで最初に出来たアジア環太平洋系向けの社会福祉サービス団体であるオリエンタルサービスセンターで,ケースマネージャーとして1年半働いた後,1980年に設立されたリトル東京サービスセンターに最初のスタッフとして参加しました。同センターで働きながら,カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院で勉強してカリフォルニア州公認心理カウンセラー(LCSW)の資格を取得され,日英バイリンガルのソーシャルワーカーとして,日本語しか話すことができずに当地の福祉を受けられない日系一世の高齢者,新一世の家族の方々に対して,福祉が受けられるようサポートを行い,時には福祉局,警察,裁判所まで直接出かけられることもありました。
 
同氏は,日系ファミリーカウンセリングプログラムなど文化と言語を考慮にいれた数々のプログラムを発展させたほか,市・郡・州や連邦政府からの資金調達,他の団体との協力関係強化,各分野の専門家との連携なども進め,リトル東京サービスセンターが多種多様なサービス・プログラムを提供できるようになる礎を築かれ,1996年に同センターの初代社会福祉部長に就任してからは,その豊富な実務経験及び指導力により多くのソーシャルワーカーを監督・育成されました。
 
退職後,同氏は地域社会のウエルネス向上に関わるサービスプロバイダーと共にリーダーシップ,メンターシップ,プロフェッショナル・エンハンスメントやセルフケアーなどを目的として「さかもと塾」を発足され,現在,未来の地域社会のウエルネスに繋げていけるよう活動されています。
 
36年間にわたり日系社会の精神衛生及び社会福祉の発展に大いに貢献された功績が認められ,2018年には,南カリフォルニア大学(USC)内に設立された「カリフォルニア社会福祉功労者ホール」に名前を刻まれる殿堂入りを果たされました。