平成30年春の叙勲受章者

平成30年4月28日

4月29日(日本時間)、日本政府は、平成30年春の叙勲受章者を発表しました。
当館管轄区域関係者では、次の2名に対して授与されます。

 


 

賞賜

功労概要

主要経歴

氏名

性別 年齢

現住所

旭日中綬章 アメリカ合衆国における日本研究の発展及び日本・アメリカ合衆国間の学術交流の促進に寄与 カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授
元カリフォルニア大学サンディエゴ校
国際政策・戦略研究大学院教授

エリス・S・クラウス 
Ellis S. Krauss
(男)  (74歳)

米国
カリフォルニア州
エンシニータス市
旭日双光章 日本とアメリカ合衆国の経済関係強化、相互理解の促進に寄与 元 全米日系人博物館理事長
元 アメリカン・フィッシュ(株)社長
アーネスト・ドイザキ
Ernest Doizaki
(男) (70歳)
米国
カリフォルニア州
ロサンゼルス市

 

各受章者の対日功績

エリス・クラウス  【旭日中綬章】

エリス・クラウス氏は、昭和19年米国テネシー州で生まれ、ニューヨーク州ブルックリンで育ちました。ニューヨーク市立大学ブルックリン校を卒業した後、昭和39年にスタンフォード大学大学院に入学し、昭和48年に博士号を取得しました。ウェスタンワシントン大学及びピッツバーグ大学教授を経て、平成7年から同27年に名誉教授として引退するまで、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校(以下、UCSD)の国際政策・戦略研究大学院の教授として教鞭をとりました。クラウス氏は、45年以上に渡り、日米の学術交流を促進し、米国における対日理解の向上に貢献しました。

クラウス氏は、日本政治・外交研究の第一人者として数多くの研究に取り組み、100本近くの論文・書籍を執筆しています。同氏の研究論文は、専門家の中でも高い評価を受けており、政治学分野で世界最高権威とされる論文ジャーナル「アメリカン・ポリティカル・サイエンス・レビュー」及び「アメリカン・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス」を始め、権威あるジャーナルに数多く掲載されています。また、同人の出版本は、日本語で翻訳出版された書籍を含め8冊に及びます。

クラウス氏は、日本政治に関する広い見識と実績から、日本を始めイギリス、ドイツ、イタリアなどの著名な大学から招聘され、比較研究に取り組んできました。現在、同氏は、ドイツ人と米国人の政治学者と共に、ドイツと日本の戦後の憲法の下での安全保障政策の比較研究に関する著書の執筆に取り組んでいます。

また、UCSDでは、平成9年から13年の間、各国政府の官僚や経済人を対象とした国際リーダーの育成講座である「国際キャリア・アソシエイト・プログラム」(現在のグローバル・リーダーシップ学科)のディレクターを務め、我が国の官僚を含む多くの国際人材の育成に力を注ぎました。UCSDで同氏が教えた学生の多くは、米国国務省のジョン・ナイリン氏やハーバード大学日本政治学准教授のダン・スミス氏、武蔵大学の根元邦明准教授をはじめ、政治・外交分野で活躍しており、同人は、後進の育成にも尽力しました。

 

アーネスト・ドイザキ  【旭日双光章】

アーネスト・ドイザキ氏はカリフォルニア州ロサンゼルス生まれの日系3世。昭和40年にクレスピ高校を卒業した後、サンフランシスコ大学に入学。この頃から、父ジョージ・ドイザキ(昭和57年春勲三等瑞宝章)が経営するアメリカン・フィッシュ株式会社で手伝いを始め、大学卒業後、日本の早稲田大学に留学しました。昭和47年に帰米した後、アメリカン・フィッシュ株式会社に副社長として就職。昭和57年には社長に就任し、事業を拡大。米国における日本食の普及を食材供給面から支えました。

また、日系人社会に限らず米国社会に対しても貢献しており、平成6年にはがん及び糖尿病患者の治療・研究施設である「シティ・オブ・ホープ」から、シティ・オブ・ホープ・スピリット・オブ・ライフ賞を受賞。現在は、米国に寄港するクルーズ船に食材を供給するカンザス・マリン株式会社の代表取締役社長を務めています。

当地の日系コミュニティへも積極的に参加しており、特に、平成4年に開館した全米日系人博物館では、開館の前年より理事を務め、米国史の一部としての日系人の歴史を広めることを通じて、日系人の地位向上、日系人と日本人の未来志向の関係構築に貢献しました。親戚が日系人収容所に収容された経験から、日系人の名誉回復や日系人の地位向上に対する関心が高く、全米日系人博物館へは構想段階から参加しています。同博物館は、米国史の一部として日系人の苦難の歴史を後世に伝えつつ、日系人に対して行われた不当な処遇をいかなる少数派に対しても繰り返してはならないとのメッセージを発信しており、多数の民族的コミュニティが共存している当地を象徴する存在となっています。同人は、平成3年より理事を務め、平成22年から平成26年までは理事長を務めました。平成22年、米国政府は同博物館に対し、米国博物館・図書館情報サービス機構栄誉賞を授与しています。日本における同博物館の認知度は高まっており、これまで皇太子同妃両殿下の他、小渕総理や安倍総理等が同博物館を訪問しています。

同人は当地における日本食が、米国市民へ広く普及していく上で大きな役割を果たしました。昭和57年から平成26年までアメリカン・フィッシュ株式会社で社長を務め、現地で日本食材の調達が難しかった当時に日本から鮮魚を毎週空輸していた同社は、日本食レストランの経営者たちにとっては必要不可欠な存在でした。米国主要都市での日本食普及に向けた貢献も大きく、流通倉庫を国内各地に設置し、全米における日本食の普及を供給面から支えました。平成11年に発足した米国日系レストラン協会には同人も参加し、日本食レストラン関係者とも積極的に交流しました。