日系人社会
平成30年12月22日
1.日系人社会の現状
■変遷する日系人社会
日系人とは、一般的に、日本人の血を引くアメリカ人のことを指します。南カリフォルニアへの日系移民は、明治時代のパイオニア一世移民から始まりました。現在、日系人の3分の2は米国生まれで、世代ごとの年齢平均は概ね、2世70~80歳、三世30代~60代と言われています。特に三世以降は異人種間結婚も多くなってきており、日本人の血を引くことを特に意識せず、日本語を話さない人たちも増えてきています。多くの日系人の若者の中には、日本に一度も訪問したことがない人たちも多いのです。(日系人に関する詳しい情報は全米日系人博物館ホームページ(http://www.janm.org/jpn/main_jp.html
)へ)

また、戦前に米国に移民し、戦時中、日系人収容所に収容された日系人とその子孫とは異なり、戦後になって米国に移住した「新一世」とその子孫も、新たな日系人としてコミュニティを形成しています。更に、多くの日系人が、異人種間結婚により、他人種と日系人との混血となってきており、一概に日系人とは言っても、様々な世代と歴史的背景、人種構成となってきています。
南カリフォルニア地域は全米でも最大の日系コミュニティがあり、42の県人会、県人会協議会、南加日系商工会議所、日米文化会館、全米日系人博物館、敬老シニア・ヘルス・ケアなど、極めて多くの日系団体が存在しています。しかし比較的若い世代の日系人の中には、こうした団体には属さずコミュニティ活動に関心を持たない人も多いことから、日系人としてのアイデンティティを醸成していくことが日系コミュニティの維持・発展のための今後の課題となっています。
■日系人人口
2000年国勢調査結果によれば、全米の日系人人口は、純血の日系人が79万6,700人、他の民族との混血も加えた数字が114万8,932人となっています。このうち、カリフォルニア州は、それぞれ28万8,854人(日系のみ)、39万4,896人(他民族系との混血も含む)で、北米で最も日系人数が多い州となっています。
日系人人口の多い州は、以下のとおりとなっています(2000年国勢調査)
日系人のみ | 他人種との混血 | |
1. カリフォルニア州 (うち南カリフォルニア) |
288,854 177,980 |
394,896 238,611 |
2.ハワイ州 | 201,764 | 296,674 |
3.ニューヨーク州 | 37,279 | 45,237 |
4.ワシントン州 | 35,985 | 56,210 |
5.イリノイ州 | 20,379 | 27,702 |
6.テキサス州 | 17,120 | 28,060 |
7.ニュージャージー州 | 14,672 | 18,830 |
8.オレゴン州 | 12,131 | 19,347 |
9.コロラド州 | 11,571 | 18,676 |
10.ミシガン州 | 11,288 | 15,745 |
また、日系人人口推移のもう一つの特徴は、一般的に増加を続けているアジア系アメリカ人の中で、日系人人口のみが減少傾向にあるという点です。現在、アジア系の中で最大の人口を有するのは中国系(アジア系の23.7%)ですが、これに続き、フィリピン系(18.1%)、インド系(16.4%)、ベトナム系(11.0%)、韓国系(10.5%)となっており、日系は6番目の7.8%(米国総人口に占める割合は0.3%)です。こうした状況の中、日系人の若い世代は、他のアジア系アメリカ人との連携を深めており、いわゆる「アジア系アメリカ人」としてのアイデンティティを強めつつあるとも言われます。
■米国社会で活躍する日系人
俳優のジョージ・タケイさん、スケート選手のクリスティー・ヤマグチさん、指揮者のケント・ナガノさんなどは、日本でもよく知られている日系人ですが、一般的に日系人は教育水準も高く、弁護士、医者、教師等の知的・専門職業に就く人々が多くなっており、米国各界で活躍する人材が育っています。他方、政界に進出を果たしている日系人数は、比較的少なく、2005年7月現在、連邦レベルでは上院1名(ダニエル・イノウエ議員)、下院2名(マイク・ホンダ議員、ドリス・マツイ議員)のみとなっています。
2.日米関係における日系人と日本人
■相互理解と関係強化
日系アメリカ人コミュニティは過渡期を迎えています。かつて一世及び二世の世代が担っていたコミュニティの指導的役割は、三世以降の世代に受け継がれつつあります。
こうした若い日系世代の人々は、米国社会にしっかりと根を下ろし、様々な分野の一線で活躍しているわけですが、反面、祖先の母国である日本に強い絆を感じる人は少なくなってきているようにも思われます。他方、日本人も、米国の日系人の歴史や経験について深い知識を持つ人は案外少ないのが現状です。 しかし、日本と米国という異なる国の国民でありながら同じ祖先を持つ日本人と日系人は、互いに理解し信頼しあえる、かけがいのない友人となる可能性を持っていると言えるでしょう。新しい日系世代と若い世代の日本人とが交流を深め、互いを信頼しあい、ネットワーキングを図っていくことにより、将来の日米関係の揺るぎないパイプを築くことが出来るのではないでしょうか。 このような考え方に立ち、外務省、在ロサンゼルス総領事館は、国際交流基金、経団連などの日本側組織や、全米日系人博物館ほか日系人団体とも協力して、日本と日系人との関係強化に取り組んでいます。
これまで実施された主なプログラムは以下のとおりです。
- 日系人リーダー訪日プログラム
(外務省と国際交流基金との共催により、全米の日系人リーダー10~12名を日本に招待) - 在米日系人リーダーと関係在米公館長との会合
(日系人が多く居住する地域を管轄する在米公館長と日系人リーダーの代表が一同に会し、共通の関心事項について意見交換を行います) - 経済分野での日本人と日系人との交流
(懇親会や意見交換、セミナー等の機会を設け交流を図っています) - 河野洋平衆議院議長の講演会
(2004年9月、河野議長がLAを訪問し、全米日系人博物館において、「日系人と日米関係」と題する講演を行いました) - 全米日系人博物館理事会の日本訪問
(2005年5月、80名余りの日系人関係者が訪日し、経団連会館でシンポジウムを行ったほか、博物館理事会メンバーは小泉総理を表敬しました)